日高まきば文芸室

『ジーガー君のこと』作・船 旅人

僕の携帯ストラップは、ジ―ガ―と言う名の馬の写真です。

ホロシリ乗馬クラブで、巡り合ったジ―ガ―君は、5頭用意された馬の中で、一番大きな、ガッシリした馬でした。

ジ―ガ―君の本当の名は、ジ―ガ―トップといいます。2006年4月24日生まれ。というから、現在11歳ともうすぐ半年。生涯成績は20戦2勝で、獲得賞金3115万8千円です。

そこそこ稼いだ?いやあんまり走らなかった馬?ちょっと評価はしづらい。

が、僕にとっては、その姿を携帯ストラップに括りつけて、永遠に忘れない馬になったのです。

何故か?って。 初めて乗馬した馬がジ―ガ―君だからです。

競馬中継風に言えば、「鞍上に船旅人。重馬場ですが、気合は…」って、あんまり気合も入ってはいませんでしたが…。

「馬に乗りたい」という、同行者達のご希望に沿って出かけたホロシリ乗馬クラブ。もう一人バイクでやって来た若者もいて…、合計5人が一線に…、て、別にレースじゃないですけどね。

68歳にもなった僕が馬に乗るなんて、乗馬クラブに来るまで考えもしませんでした。連れの連中を乗せ、それを写真撮影すればいいくらいに思っていました。メリーゴーラウンドに家族を乗せるお父さん役を務めるかのようにね。

ところが用意された馬は5頭。しかも乗馬クラブって、そのために育てられた馬に乗せるのだろうぐらいに思っていたのに、なんと本当に競馬場で走っていた馬たちの背に鞍が置かれているというじゃないですか。

ここは一番!と老体に鞭打つ思いで、「はい。お願いします」と言ってしまったのでした。

クラブ備え付けのブーツを履いて。私、頭は大きいですからね。一番大きなヘルメットを出して戴いて、晴れてお馬さんたちとご対面!

で、クラブの指導員さんが僕に割り当ててくれたのが、ジ―ガ―君です。茶色い毛が目立つ、つまり茶髪の大型馬でした。

ちょっと珍しい「栃栗毛」という毛色だそうですが、まあ簡単な乗り方のご注意を受けて、馬上からたてがみを見た時、数本ですが白い毛も混じっていて。まあリタイアした競馬馬か?「あらら、ご苦労様」とちょっと後ろめたさも感じたんですがね。

聞けば、競馬馬は、生まれて1年と少し牧場を走り周り、2歳時に競馬場デビュー。まあその後の成績にもよるようですが、人生でいえば青年から壮年期に当たる4、5年間ほど、レース場で活躍します。

その後は好成績を上げ血統が評価されれば、種牡馬として、もういちどフットライトを浴びる第二の馬生を送るために。北海道などの生地に戻ります。

ですが、種牡馬になれなかったり、種付けの人気がなかった馬は、こうしていろいろなアルバイトをこなしながら、余生を送るようです。

でも、ホロシリ乗馬クラブに移籍し、競馬ファンにもう一度愛され、日がな一日、放牧場で走り回る。なんか素晴らしい生活だと思いませんか?

御同輩の皆さん、65歳を過ぎたら「余生」だ、なんて引きこもっている生き方では、ジ―ガ―君に馬鹿にされますよ。

競馬のエッセイを読んでいたら、赤羽秀男さんという私と同世代の騎手が、初めて馬に乗った時の印象を聞かれて「随分、高いところに乗るんだな、と思って目がくらんだ」、と感想を述べておられましたが、僕がジ―ガ―に乗せてもらった時の最初の印象もまさにそれ。「1時間程度」と説明されていたのですが、「そんなに、持つんかな」というのが、正直な感想でした。

たずなの持ち方、鞭の使い方、ブーツで馬体を払うタイミング、などコーチに丁寧な説明を受けたものの、緊張のしまくり。フィールドに出る前に、「はいジ―ガ―。たずなは前、ゆったりと」なんて、コーチは私の名前よりも、馬の名で注意をなさる。そして狭い山道に乗り出して行ったのでした。

でもねえ、案ずるより産むが易し。

ジ―ガ―君は騎手の指示など聞くこともなく、野山を走り!じゃなかった野山をゆっくりと歩いてくれたのでした。

馬の平均寿命は人の4分の1とか。つまりシーガー君は、まだ人間でいえば、45歳くらいですね。

初対面の際に感じた高齢馬?とか、白髪混じりとか、本当に失礼しました。

次にお訪ねする時は、必ずご指名いたしますので、もう少し頑張りましょう。

お互いにね。

【追伸:編集長より】


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船旅人

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1949年生まれ。専門新聞社の社長退任後、趣味の旅行を軸に文筆業を目指す。特に船を利用した旅を好む。

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